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環境省による環境アセスメントマニュアルの完結

文責:島津康男
掲載日:2002年11月30日~
転載の可否:

1 3冊のマニュアル

 環境省の環境影響評価技術検討会(以下「検討会」といい、学界・業界のメンバ-からなる)がまとめた次の2種類、計3冊のマニュアルが刊行された。

  • 環境省編 大気・水・環境負荷の環境アセスメント(III) 
         財務省印刷局発行 平成14年11月 542 ペ-ジ
       (以下誤解を生ずることを承知の上で、簡単のために「公害マニュアル」とよぶ)
  • 環境影響評価技術検討会編 環境アセスメント技術ガイド
         生態系 (財)自然環境研究センタ-発行 平成14年10月 277ペ-ジ
         自然とのふれあい (財)自然環境研究センタ-発行 平成14年10月
         239ペ-ジ(以下、それぞれ「生態系マニュアル」「ふれあいマニュアル」とよぶ)

 これらは、3年にわたる検討会の成果の最終報告であり、スコ-ピングから事後調査に至る全段階をカバ-していて、これで現行法に対応する作業は一応完結したことになる。編集のスタンスは両者同じではないが、環境項目別になっていること、ケ-ススタディを通して留意点を指摘すること、では共通であり、所管省が作成している「事業別マニュアル」とは違った切り口をもっている所に特色がある。事業別マニュアルが指示書の役割を果たし、結果としてこれからの逸脱を許さない傾向があり、環境省のマニュアルを引用したことにすら異議が出るとの噂さえある。このため、現実の環境アセスメントが事業種別の類型にこだわり過ぎて地域の特性への考慮の少ない金太郎飴になっているので、今回のマニュアルは存在意義が大きい。そして、本シリ-ズの目的にうたわれている「事業別マニュアルの作成・修正」に活かすことが望ましい。

2 公害マニュアル

 これはシリ-ズの第3巻で「環境保全措置・評価・事後調査」をカバ-しており、予測に不確実がある場合の対応を強調していることが特徴である。不確実の原因には、予測条件の不確実、予測技法の未熟の両方があるが、何れにしても複数のシナリオ、結果の上限・下限を示す、いわゆる「複数案の比較」「感度分析」の必要性を強調しているのは重要である。ただし、これは環境保全措置の段階だけで考える問題ではなく、はじめから代替案の絞り込みの過程で考慮すべきものであろう。又、技術シ-トの形で「調査・予測の必要条件、適用範囲、課題、文献資料」を示し、選択メニュ-を提示しているのは有用である。

3 生態系・ふれあいマニュアルに共通の特徴

 これまでの「自然環境のアセスメント技術I、II、III」の統合版と位置づけており、同じ自然環境研究センタ-による「自然環境アセスセメント技術マニュアル」(1995) の環境影響評価法対応改定版ともいえるもので、編集スタイルもこれに似ている。その結果、各章の記載フォ-マットを旧版と統一することに追われてか、検討会の報告書としての「自然環境のアセスメント技術I、II、III」よりもかえって読みにくくなっているのは残念である。

4 生態系マニュアル

 藤前干潟や泡瀬干潟における人工干潟など、最近話題になりかつ具体的な実施研究も行われて、平成14年6月に開かれた環境省の国際シンンポジウム「環境アセスメントと生物多様性の保全」や環境アセスメント学会のシンポジウムでも扱われた「代償措置(ミティゲ-ション)」について、陸域生態系の章では簡単なコラム、陸水域生態系では1ペ-ジ、海域生態系では3ペ-ジを割くだけで定量評価についての言及がなく、BEST,HEP,WETなどの手法については関連資料のなかで言葉の説明だけで終わり、実例の提示がないのは残念である。さらにいうならば、生態系の扱いを「食物網の解析」から見る観点と、「上位性」「典型性」「特殊性」をもつ種への影響を見る観点とに分離したままになっているのが物足りない。確かに、法の施行ともに公表された技術指針ではそうなっているが、これが生態系の扱いの弱点であることは確かであり、一歩でも進めた見解を示してほしかった。これは、まず生物リストを作成することに多大の労力と経費を割きながら、自然環境のアセスメントには余り活用していない現行の「帰納型アセスメント」の弱点の解決につながるものである。

5 ふれあいマニュアル

 これは「景観」「ふれあい活動の場」の二つの部分に別れているが、全体を通じて一つのダミ-事例を軸にして解説が進められているので、「生態系」よりもわかりやすい。「景観」については、これまで主流を占めていた、外から事業予定地を見る「眺望景観」と並んで、予定地の中又はすぐ近くから見る「囲繞景観」を重視しているのが特色であるが、これは当然地元住民からの目に相当する。「ふれあい活動の場」にも同じことがいえ、遠くからハイキングに来る不特定多数の人だけでなく、地元住民の生活そのものもふれ合いの対象になる。とすれば、住民自体の行動・関心がアセスメントの対象になり、方法書作成の段階から住民が参加する意義がある。現に、万博の場合には、住民自体が「環境診断マップ」を作って、残したい所、心配な所を指摘している。このような、スコ-ピング段階からの住民参加型アセスメントは「ふれあい活動」でまず実行するべきであろう。今回の「ふれあいマニュアル」では、対象場所は事業予定地の中及びその周辺であるものの、よそからの不特定の人による評価に偏っているのは不十分ではないか。スコ-ピング段階からの住民参加は「生態系」のアセスメントにも考えられ、住民が大事に思っている生物の生息環境への影響から生態系をみるといった、「仮説検証型」の環境アセスメントは自然環境全般にあってもいい。これは、「生物リスト」を先ず作成する「帰納型アセスメント」の逆をいくものであり、経費の節約にもなる。方法書段階での仮説が間違っていれば、方法書の公表後の指摘で修正すればいいのであり、方法書の形骸化を防ぐにも役立つのではないか。