長野県でSEA実施、コンペ方式でコンサルタントを選定
文責:原科幸彦
掲載日:2003/4/5-
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長野県の中信地区・廃棄物処理施設検討委員会が、3月30日(日)に終了しました。この会議で何と第33回目の委員会でした。委員会の検討結果は、報告書として翌31日(月)、田中康夫知事に提出しました。
この件は、本学会の皆さんの中にも既にご存知の方もおられると思いますが、まず、経緯を簡単に説明します。
●経緯
中信地区とは長野県を四つのブロックに分けたものの一つで、松本市を中心に北は大町、南は木曾まで含まれるかなり広い地域です。県産廃事業団の施設建設が、当初は松本市の北に隣接する豊科町に予定されていましたが、地元住民の反対により頓挫していました。しかし、2000年秋の田中康夫知事の誕生で事態が変わりました。
県の第三セクター、産廃事業団の施設計画ですが、産廃だけでなく一廃も抱き合わせで処理するため地域の合意形成が大変に難しい。さらに、この結果、中間処理施設と最終処分場の両者を考えねばならないため、リスク管理の点でも困難な事例です。しかも、中信地区には37の市町村が含まれますので広域の行政という困難さが加わります。
このような状況のなか、私が委員長を依頼されましたが、本学会の村山武彦常務理事にも学識者委員としてご参加頂き、その上、副委員長として大変なご尽力を頂きました。
●検討委員会方式によるパブリックインボルブメント
問題を白紙に戻して検討することになり、2001年5月末から検討委員会方式で、施設の必要性の検討から始めました。検討委員会は会議をベースとしたパブリックインボルブメント(PI)です。
検討委員会は、学識者7名と公募委員12名により構成し、極めて透明性の高い方法で議論を重ねて来ました。会議は当然,公開ですが、毎回ビデオ録画し地元のCATVで放送し、議事録は発言順に発言者名を明記したものを作成し、会議資料を合わせホームページ上でも公表しました。
こうして、2003年3月までの約2年(22ヶ月)の間に33回の委員会を開催し検討して来ました。検討委員会での議論だけでは不足する分についてはイシュー単位でWGを構成し、こちらも延べ32回もの検討を重ねました。最終報告書を出すまでに検討内容の確認のため、3つの文書を作成・公表し、3回のパブリックコメントの機会を設けました。さらに、これらのために説明会を10回開きました。
議論に必要な情報収集のためにも最大限の努力を払い、現地視察やゴミの組成調査を実施、見学会も数回開いています。県にはこの間、情報公開につとめてもらい、必要な情報提供のため専門家の招聘も数回行いました。また、常時メールでの意見を受付、郵便での意見、また、検討会の会場での意見陳述の機会も適宜設け、その場での応答もしています。
議論の詳細については、長野県のホームページ(以下のアドレス)で分かりますので、ご覧下さい。最終報告書と3つの途中段階での報告書の他、委員会とWGの議事録だけでも1000頁に及ぶ資料になります。
http://www.pref.nagano.jp/seikan/haikibutu/kentou.htm
●成果
この検討委員会では、政策 → 計画 →(事業) という意思決定の流れに沿って議論を進めました。計画段階は、さらに基本計画と整備計画の段階に分かれますが、整備計画の途中までを委員会での議論の範囲としました。
検討委員会方式は、固定メンバーが継続的に会議を行うパネル形式の会議です。この検討委員会方式での議論は、計画段階の途中までなら効果的に行えます。十分な議論を行うためには20人程度までというパネル形式の限界から、ステークホルダーの数があまり多くならない段階での検討に向いています。
具体的には、施設整備の立地選定の枠組みづくりまでです。立地選定そのものは、この検討委員会では扱いません。それは、立地選定段階では多数の候補地が列挙されるため、ステークホルダーの数が急増するからです。
このような前提での検討の結果、以下の合意が得られました。
(1)一廃(3分の1削減)と産廃(6割強削減)の減量目標の設定
(2)最大限の減量化をしてもなお残る廃棄物の処理のために、やむを得ず
建設する施設の種類と規模を決定
(3)施設は地域間公平性のため、中心地区を3ブロックに分けて建設
(4)立地点列挙のために立地不適地を抽出(9割ほどの地域が除外)
(5)立地点選定の手続を決定
●今後: SEAの実施 ・・ コンペ方式でコンサルタントを選定!
4月からは合意形成の後半部分が始まります。この段階では多くのステークホルダーが関与できるよう文書をベースとしたPIであるアセスメントを実施します。このため、事業アセスではなく、上位計画段階で行う戦略的環境アセスメント(SEA)を実施します。このSEAは、立地選定という整備計画の最終段階で行います。
5月中頃にSEAを行うコンサルタントの募集を開始し、1ヶ月ほどの募集期間の後、6月中にコンペ形式で受注者を決める予定です。是非、本学会のメンバーからも多数ご応募下さい。
田中知事は今年度、立地選定と減量施策の具体化のために1億円強の予算を組みました。予算上の準備はOKです。これに基づき新たに上記の検討委員会の後継組織を早速作ります。この後継組織では、SEAの進行管理と審査、また、施設整備の前提条件である廃棄物減量化の具体施策の検討を行います。
私は4月8日に知事から後継組織の委員長として委嘱状を受け、次の段階のスタートを切ります。このことは昨日公開されました。この委員会でも村山常務理事ほか、本学会からのご協力を頂くことになると思います。SEAと合意形成の新しいモデルを作るべく、さらに努力したいと念じております。 |